予備試験を独学・1年で受験してみた

非法学部生が独学・1年未満で予備試験に合格した記録(問題集絶対主義)/73期弁護士

司法試験終了後の就職活動 体験談Part.3

結論から申し上げると、就職活動を停止しようと思っています。

今、すごくスッキリした気分で記事を書けています。

内定を頂けたからではありません。

僕は、バイトを除き、今まで一度も面接に通過したことがないです。

必ず一次面接で落ちます。

昨年の民間企業や公務員の就活でも、今年の法律事務所の就活でも…

ゆえに、売り手市場にもかかわらず、面接通過率0%(通算0/55程度)の僕が、正攻法で勝つのは難しいと判断しました。

 

では、就活をやめるとはどういうことか。

僕は運の良いことに、親戚に弁護士が数名います。

今年の司法試験に最終合格した場合、就職先を紹介してくれることになりました。

 

 

これからES、面接、説明会等に時間を取られることもありません。

塵も積もってバカにならない金額の交通費もかかりません。

最高です。

・昼間から家の階段に座って、Amazonプライムビデオを気兼ねなく視聴できています。

Kindleで、司法試験勉強のため未読になっていた漫画『湯神くんには友達がいない』を読めています。

・既に民間企業に就職した同級生と会う時間ができました。

・刑事裁判の傍聴に行き始めました。実務のイメージができて楽しいです。

 

読者の皆様の中には、「自分は頑張っているのに…」「コネかよ」と不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

どうかお許しを。

司法の犬は、実力も人望もないものの、非常に運が良いために今までやってこられた「強運だけの人間」なのです。

また、僕は人の裏を取ることで上手くやってきた人間です。

 

わざわざブログに書く必要のないことだとも思いました。

しかし、僕は昨年就職活動で精神を病みかけた経験があります。今年もその入り口に立ちました。

同じように就職活動がうまく進まない方々に、ひとつの解決策として参考になればと思い書かせていただきました。

 

自分にとっても、(この時期を自己研鑽に使えるため、また早期退職はあり得ないため)相手方にとっても良い結末になったと思っています。

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予備試験受験生の質問・お悩み、受け付けます

いつもコメント欄で行う回答より濃い内容になるよう心掛けます。

 

①質問内容の条件

・予備試験、または司法試験に関すること

(他資格も可、但し回答できないことがあります)

もしくは

・司法の犬個人のこと(内容により、回答できない場合があります)

②回答の条件

・質問文、ニックネームを記事で公開できること

③注意点

・質問が多数の場合、一部のみ回答いたします。ご了承ください。

・期限は、6月28日(金)とします。

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令和元年司法試験 短答試験 成績通知書

自己採点通りです。

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憲法38、民法69、刑法37 合計144(/175満点中)

微妙ですね…特別良くもなく、かといって平均よりは上なので悪いともいえない。

 

短答学習は、入浴中とか不定期での電車移動中などのスキマ時間にやることがメインだったでしょうか。

 

短答式の勉強は、下記の記事にある勉強法をベースに、肢別本(+昨年度分の過去問はLECの単年度)を教材として行いました。: 肢別本→Amazon/楽天

びっくりするほどシンプルな勉強法なので、ご興味があればどうぞ。

P.S.当ブログ読者の方の多くが、このやり方にシフトしているようです。

shihounoinu.hatenablog.com

  

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司法試験後の就職活動 Part.2

相変わらずの就活弱者っぷりですが、何とかめげずに頑張っています!

去年の民間企業就活よりは今のところまだマシかな。

 

【大手】

とりあえず4つ出すだけ出す→

2つ個別面談呼ばれる→2つともサイレントお祈り

 

【中規模】

5つ説明会行く(自信がないのでさらに行く予定)→4つ個別面談申し込む

→呼ばれたのは1個(ただし、第一志望なので上出来)、他はサイレントお祈り

 

何故だ。

予備の成績が悪いからですかねぇ。

 

結構、交通費と割かれる時間(説明会、面談、ES作成、移動時間)の負担が大きいです。

 

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司法試験後の就職活動(予備試験合格者の一例)

まあ随分と悲惨な状況になっています。

今のところ複数事務所の説明会に申込み、その中のほぼ全てに個別訪問(※面接のこと)の希望を出していますが、個別訪問は今のところ1つしか呼ばれず、個別訪問に行ったところも含め全てサイレントお祈り状態*1です。

 

僕は、昨年の大学4年次にやった一般企業の就活ですら(普通はESで切られる大学ではないのに)ES通過率が30%くらい&受けた面接は、大手から無名の中小まで全て一次面接落ちです。すると、周囲のライバルが高学歴になれば、なおさら社会不適合者の僕はお呼びではないということなのでしょう( ´∀` )

 

このように僕は就活弱者なので、今年は(去年と違い)早めに動き始めたのですが、どうやらそんなことでは効果は無さそうです。

出来る限りのことはやりますが、早くも即独立の可能性が高くなってきたように感じます。

 

【結論】

多分、弁護士の就活も一般企業の就活とそれほど変わらない。

つまり、成績・学歴は参考程度にしか見られず、もしくは足切りのラインとして使用されるにすぎない。結局はいわゆる「人物重視」「人柄採用」というヤツであると感じた。

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*1:不採用者には不採用の連絡をしないで放置しておくこと

予備試験論文試験に向けて追い込みをする受験生へ

さて短答終了後から論文試験までの、この1か月ちょっとで追い込み・詰め込みをしようと考えている方もいらっしゃると思いますが、経験者として後悔したこと2点を以下に述べます。先行者の反省点をぜひお役立てください。

 

①誤った勉強法をしていないか

現在、「科学的に正しい勉強法」「科学的に誤った勉強法」というのが分かってきています。

そんな中、あなたの勉強法が誤っていると、「正しい勉強法」をしていればあと数点上積みできたところを失うかもしれません。もっと言うと、去年の予備試験でいえば「あと5点あれば合格できていたのに…」という惜しい人が90人もいます*1が…「正しい勉強法」で勉強していれば、もしかするとその人たちは合格していたかもしれません。

例えば…誤り:テキストを繰り返し読む 正解:何度も思い出す など…

そんなあと数点の上積みを狙いたいという方、不安だけど逆転合格を狙いたい方は、下記記事の『進化する勉強法』をどうぞ。日本女子大教授の心理学者が書いた、信頼性の高い本です。

shihounoinu.hatenablog.com

 

②各科目最低1回ずつは答案を書いてみる

僕は去年の予備試験論文試験で、本番で初めて論文を書きました。

なので、下らないことで悩みながら書きました(ここ改行していいのかな、とかナンバリングってどうやるんだっけ、答案構成時間と書く時間の比率ってどうすんの?とか)。

こんな下らない迷いでなくとも、「今まで学んできた答案の型」を一度自分で「本番前に」アウトプットしておくことは有効でしょう。これによって見えてくる問題(例えば、答案構成長すぎて時間切れになっちゃう、三段論法崩れてるな等)もあると思いますしね。

 

このブログに訪問してくださる方は、スマートなやり方で短期合格を狙う方ばかりだと思いますので、ぜひ上記の2点を実践しお役立てください。

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令和元年司法試験 再現答案 まとめ

 

令和元年司法試験 憲法 再現答案

shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 行政法 再現答案 

shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 民法 再現答案
shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 商法 再現答案 

shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 民事訴訟法 再現答案 

shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 刑法 再現答案 

shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 刑事訴訟法 再現答案

shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 労働法 第1問 再現答案 

shihounoinu.hatenablog.com

 

令和元年司法試験 労働法 第2問 再現答案 

shihounoinu.hatenablog.com

 

短答試験の成績はこちら:令和元年司法試験 短答試験成績通知書

論文試験の成績はこちら:後日追完予定

 

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令和元年司法試験 再現答案 民法(B評価)

評価予想や議論のネタにしてもらうのは構いません。

一切の転載・複写をご遠慮願います。 

民法 再現答案】

第1設問1

1.(1)本件事故は、6月7日に起こっており、請負契約の目的物である甲建物の完成後引渡し前に起こっている。本件契約では、所有権の帰属に関する特約がないから、請負契約の目的物の完成後引渡し前の所有権は誰に帰属するか問題となる。

(2)当事者の合理的意思解釈から①目的物の材料の全部または重要な一部を提供した者に帰属し、②①の場合であっても注文者が代金を支払い済みであれば、注文者に所有権が帰属する旨の特約があったものと推認される。

(3)本件では、①請負人Bが甲建物の建築に必要な材料を全て自ら調達しているから、請負人Bに完成後引渡し前の甲建物の所有権が帰属するとも思える。

しかし、②について、Aはすでに請負報酬の80%を支払っている。この点、不可分債務においては債務の大部分を履行したといえれば、信義則上相手方は自己の債務の履行を拒むことはできない。本件でもAはすでに請負報酬の80%を支払い済みであるところ、これは債務の大部分を履行したといえる。よって、請負人Bは所有権の移転を拒むことはできず、本件では注文者Aに所有権が帰属する旨の特約があったものと推認される。また、推認を覆すような事情もない。

(4)以上より、本件事故が発生した当時において甲建物の所有者はAである。

2.(1)では、所有者Aに対して工作物責任民法717条1項、以下法名略)を問えるか。

(2)「土地の工作物」とは、土地に定着する建物およびこれと有機的一体となって機能する有体物をいうところ、甲建物はこれにあたる。

(3)「設置又は保存に瑕疵がある」とは、土地の工作物が通常有すべき安全性を有していないことをいう。本件では、甲建物に用いられていた建築資材に建物の一部損傷を招くような欠陥があり、通常有すべき安全性を有しておらず「瑕疵」がある。

(4)また、本件事故によってCが負傷しており、治療費の支出を余儀なくされているから「損害」がある。

(5)また、本件事故は甲建物に用いられていた建築資材の欠陥が原因で甲建物の一部が損傷し落下したことにより発生しているから、瑕疵と損害の因果関係もある。

(6)では、「占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした」(717条1項但書)といえるか。

たしかに、請負人Bは専門家として、甲建物に用いられていた建築資材の安全性について調査すべきであり、過失があったとも思える。しかし、右資材は定評があり、多くの新築建物に用いられていたこと、右資材の製造業者において検査漏れがあり、そのため必要な強度を有しない欠陥品が出荷され、甲建物にはたまたまそのようなものが用いられていたのであるが、請負人はそのような事情を知る由もないこと、などの事情に鑑みれば、Bには過失はなく「占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした」といえる。

(7)よって、本件では、CはAに対し、所有者としての無過失責任として工作物責任を追及できる。

第2設問2

1.Hの主張

(1)乙建物の所有権を取得し、登記を備えることによって、譲受人は賃貸人の地位をも譲り受けるとの主張をする。

(2)賃貸借契約の賃貸人の地位の譲渡は、債権譲渡と債務引き受けの両面を有するから、譲渡人・譲受人・賃借人の三者間の合意によるのが原則である。もっとも、当事者の合理的意思解釈および法律関係の錯そう化回避のため、賃貸人の地位は賃貸借契約の目的物の所有権の移転に伴い、当然に移転するものと解する。また、賃貸人の債務は没個性的であり所有者であれば誰でもできるものである。よって、Hは本件賃貸借契約の目的物である乙建物の所有権移転に伴って、賃貸人の地位を取得する。

(3)もっとも、賃貸人に賃料を請求するためには、賃借人の二重弁済回避のため、支払いのあて先を明確化するために、賃貸人は目的物の所有権登記を要する。よって、Hは乙建物の所有権登記を備えることにより、これ以後の本件賃貸借契約にかかる賃料債権を得ることができる。

2.Fの主張

(1)本件譲渡契約は将来債権の譲渡として有効であり、賃借人Eに対して右譲渡について確定日付ある通知をしていることで第三者対抗要件(467条1項2項)を備えているから、本件賃貸借契約にかかる平成28年9月から平成40年8月までの賃料債権はFに確定的に帰属すると主張する。

(2)まず、将来債権の譲渡は有効か。

ア.将来債権の譲渡は、たしかに発生可能性が低い場合もあるものの、当事者の合理的意思としては将来債権が発生しなかった場合は、契約責任を追及することにより清算することとしており、発生可能性が低いことをもって無効とすべきではない。

イ.もっとも、将来債権の譲渡が有効となるには、期間・発生原因・第三債務者等によりその内容が特定されている必要がある。本件譲渡契約では、平成28年9月から平成40年8月までと期間の限定があり、発生原因はDE間の本件賃貸借契約、第三債務者は本件賃貸借契約の賃借人Eと第三債務者の特定がされている。よって、本件譲渡契約はその内容が特定されている。

ウ.もっとも、将来債権の譲渡が、譲渡人に著しい不利益を及ぼす場合や、他の債権者に不当な不利益を及ぼす場合は公序良俗(90条)違反として無効となる。本件では、本件譲渡契約は上記のように限定されており、かかる事情はない。

エ.よって、本件譲渡契約は将来債権の譲渡として有効である。

(3)また、Fは平成28年8月3日に本件譲渡契約の譲渡につき内容証明郵便で、第三債務者Eに通知をしており第三者対抗要件を備えている(467条1項2項)ところ、Hの登記は右通知に遅れるものであるから、本件賃貸借契約にかかる賃料債権のうち平成28年9月から平成40年8月までの分はFが確定的に取得する。

3.私見

(1)上記のように、本件賃貸借契約にかかる賃料債権はDH間、DF間で二重譲渡されている。

では、債権が二重譲渡された場合、その優劣はどのように決するか。

(2)この点、民法467条1項は「債務者その他の第三者に対抗することができない」としているところ、同条は債務者の認識を通じて公示を図るものとしている。とすれば、債権の二重譲渡がされた場合は、債務者への通知の到達の先後によって決する。

(3)ア.本件では、DF間の譲渡は、平成28年8月4日に確定日付ある通知によりEに到達している。

イ.DH間の譲渡についての平成30年2月21日の通知に確定日付がない場合は、第三者対抗要件がなく、Fが優先する。

ウ.DH間の譲渡についての平成30年2月21日の通知に確定日付がある場合は、第三者対抗要件を備えているところ、DF間の譲渡通知は平成28年8月4日に債務者Eに到達しているから、DF間の譲渡についての通知が先にEに到達しており、やはりFが優先する。

(4)以上から、Fが平成28年9月から平成40年8月までの本件賃貸借契約にかかる賃料債権を確定的に取得するから、Fが優先し、下線部㋑が正当である。

第3設問3

1.Hは、本件債務引き受け契約は錯誤(95条)により無効であると主張する。

2.(1)本件では、Hが本件賃貸借契約に係る賃料を受け取れることを動機として締結されたものであるところ、動機に錯誤がある。では、動機の錯誤も錯誤にあたるか。

(2)「錯誤」は内心と表示の不一致をいうところ、本件ではかかる不一致はなく錯誤にあたらないのが原則である。もっとも、錯誤は動機の錯誤がほとんどであるから、動機の錯誤を否定すると表意者保護にもとる。そこで、表意者保護と取引安全の調和の見地から、動機が明示または黙示に相手方に表示され、契約の内容となっている場合には動機の錯誤も「錯誤」にあたるものと解する。

(3)ここで、Gからは本件債務引き受け契約は第三者のためにする契約(537条)としてなされたものであり、乙建物の賃料債権というDH間の対価関係は契約の内容となっていないと反論する。

(4)しかし、事実10.の合意(以下、「本件合意」)の④は、Gが「乙建物を売りに出せば、買主は長期の安定した賃料収入を見込めることもあり相当な価格で売れるのではないか」と述べていることが発端となってなされたものだから、乙建物の賃料債権が本件合意④の内容となっていることはあきらかであり、動機が契約の内容となっているといえる。よって、「錯誤」がある。

(5)また、乙建物の賃料債権が得られなければ、Hはもちろん、一般人も本件債務引き受け契約を締結しなかったであろうから「要素」の錯誤がある。

3.よって、Hは本件債務引き受け契約の錯誤無効を主張できる。     以上

 

【雑感】

・大事故科目No.3 コイツがボス→なんか噂では簡単らしかった(僕的には去年のほうがずっと簡単でしたが)ので、Fも覚悟

・設問1 これが一番マシ?弁済の判例をなぜかここで持ってくる。

・設問2 大学時代の同級生らから聞いた話によれば、「将来債権譲渡の移転時期」という論点らしいです。…知りません!聞いたこともありません!

試験中、移転時期は気にはなりましたが、「本契約型の話だっけ?いや、あれは債権譲渡担保やったな」と切り捨てました。まあ書いたとしても事故になってたでしょうから、仕方ありません諦めます。

・設問3 設問2が死亡のため、現場でも何書いていいかわからなかったがとりあえず「動機の錯誤」を書く。ただ、第三者のためにする契約と対価関係の話なんか絶対いらなかっただろ、余事記載でしかも理解不足と思われかねない。仮に「動機の錯誤」で当たってたとしても、時間不足のため条文を引くことをせず、重過失の検討を見事に忘れる。

 

【使用教材】

『逐条テキスト』

→疑問点があれば辞書として活用。

『新・論文の森』

→解説と参考答案の質が高いため、上下巻ともに使用。スタンダード100でしっくりこなかった典型論点を解決してくれた。

『スタンダード100』

→わがメインテキスト。

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令和元年司法試験 再現答案 民事訴訟法(A評価)

評価予想や議論のネタにしてもらうのは構いません。

一切の転載・複写をご遠慮願います。

民事訴訟法 再現答案】

第1 設問1

1.課題⑴

Yは、民事訴訟法(以下法名略)11条により、わざわざ管轄を定める内容の契約をしているのだから、他の裁判所は管轄から排除されるのであり、管轄はB地方裁判所に限定されると反論する。すなわち、管轄を定める旨の契約は、処分権主義の範囲内であるところ、当事者がこれにつき合意した場合、相手方当事者に著しい不利益がない限り、かかる契約は拘束力を有する。よって、本件訴訟の管轄は、B地方裁判所に限定される。

しかし、11条の管轄合意は4条、5条で定められたものに管轄を追加するものにすぎない。また、11条の管轄合意の拘束力はそれほど強いものでもない(16条2項かっこ書き、20条かっこ書き参照)。すると、本件定めの内容はB地方裁判所に管轄を限定する趣旨ではなく、4条の管轄のほかB地方裁判所においても管轄を認める旨の合意にすぎない。よって、本件定めはA地方裁判所を本件契約に関する紛争の管轄裁判所から排除することを内容とするものではない。

2.課題⑵

本件定めが「B地方裁判所のみを第一審の管轄裁判所とする」という内容であったとしても、本件訴訟は17条によってA地方裁判所に移送されるべきである。

本件では、Xの居住地、訴訟代理人Lの事務所はA市の中心部にあるところ、ここからB地方裁判所までは600㎞の距離があり、移動の負担が大きい。また、たしかにY社の本店はB市中心部にあるものの、Y社は全国各地に支店を展開しておりA市にも支店がある。さらに、本件契約はA支店でなされているから、A支店に契約書等の証拠があり、また、A支店の従業員を証人尋問することも想定されるところ、これらのものの移動にも負担がかかる。とすれば、「当事者…の住所…その他の事情を考慮して」「訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要がある」から、「申立て又は職権により」本件訴訟はA地方裁判所に移送されるべきである(17条)。

第2 設問2

1.(1)Yが事実④を認める旨の主張は、裁判上の自白にあたり不可撤回効によって自由に撤回できないのではないか。

(2)裁判上の自白とは、期日においてする相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める旨の陳述をいう。なお、基準の明確性から、「自己に不利益」とは相手方が証明責任を負うものをいう。

(3)そして、当事者が争わない事実は判決の基礎としなければならないという弁論主義の第2テーゼから、裁判上の自白に当たる場合には裁判所拘束力が生じる。このように裁判所拘束力は弁論主義を根拠としているから、裁判所拘束力の生じる範囲と弁論主義の適用範囲は一致する。そして、証拠と同様の機能を営む間接事実や補助事実にまで弁論主義の適用を認めると、裁判所の自由心証主義(247条)を害するから、弁論主義の適用範囲は主要事実に限られる。

(4)また、当事者拘束力すなわち不可撤回効は、裁判所拘束力により裁判所が異なる事実を認定することはないと相手方当事者が信頼することから、相手方の既得地位保護のため禁反言の原則により信義則上(2条)生じるものである。すると、不可撤回効の生じる範囲は裁判所拘束力の範囲と一致し、主要事実に限定される。

2.(1)では、事実④は主要事実に当たり、不可撤回効によって自由に撤回できないのではないか。

(2)元の請求は履行遅滞による本件契約の解除にもとづく原状回復請求であるところ、元の請求原因事実は、①本件契約の締結②「債務の本旨」に従った履行がないこと(民法415条)③催告④催告後相当期間の経過⑤解除の意思表示である。

すると、「本件事故が起きたこと」という事実④は主要事実に当たらない。よって、事実④は元の請求との関係では裁判上の自白にあたらない。

(3)他方、追加された請求は本件損壊事実についての債務不履行にもとづく損害賠償請求である。右請求の請求原因事実は、①本件契約の締結②「債務の本旨」に従った履行がないこと(民法415条)③損害④因果関係⑤故意・過失である。

本件では、ベッドが本件仕様を有していないことで、本件事故が起きたことにより腕時計が損壊しているところ、事実④は債務不履行と損害の因果関係を示す具体的事実である。とすれば、事実④は追加された請求との関係では、主要事実であり裁判上の自白にあたる。

(4)すると、元の請求についての訴訟資料は、特に援用がなくても追加された請求についての訴訟資料になるとの理解を前提にすると、事実④は追加された請求との関係では裁判上の自白にあたり、不可撤回効により自由に撤回できないとも思える。しかし、不可撤回効の根拠は、上記のように相手方の既得地位を害しないようにすることにあるところ、事実④は元の請求との関係では主要事実にあたらず裁判上の自白にあたらないから、相手方に既得地位に対する期待は生じない。よって、上記不可撤回効の根拠が妥当せず、撤回を認めても信義則に反しないから、Yは事実④を認める陳述を撤回できる。

第3 設問3

1.Zは本件日記の文書提出義務(220条)を負うか。

2.まず、同条4号は文書の一般的な提出義務を定めたものであるから、はじめに1号ないし3号を検討する必要がある。本件では1号ないし3号に該当する事由はない。

3.では、本件日記は220条4号ニの除外事由として文書提出義務を負わないのではないか。

「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」とは、①内部利用目的で作成され、外部への開示が予定されておらず②開示によって文書の所持者に著しい不利益が及ぶものをいう。

本件では、①本件日記がどのような目的で作成されたのか、外部開示目的があったか②本件日記を開示することによって、TやZのプライバシーに著しい不利益があるか、といった観点を考慮して文書提出義務の有無を判断すべきである。         以上

  

【雑感】

・大事故科目No.2

 ・設問2以外全く分からなかった。

・試験現場での脳内

「設問1管轄!?普通裁判籍以外、丸々1年も見てないわ。とっくに忘れた。」

「設問1は、去年の試験の設問1で管轄大展開したヤツのせいだな、クソ~(#^ω^)」

「設問3なんじゃこりゃ。まあ、スタンダード100に載ってた旧試験の参考答案そのまま貼りつけとこ」

 

【使用教材】

『逐条テキスト』

→疑問点があれば辞書として活用。

『新・論文の森』

→解説と参考答案の質が高いため使用。体系的理解につながるため、新論文の森の中でも刑法&刑訴法と並んでの良書だと思う。

『スタンダード100』

→わがメインテキスト。

 

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令和元年司法試験 再現答案 商法(A評価)

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商法 再現答案

第1 設問1

1.総会招集請求(会社法297条、以下法名略)

乙社は株主総会の招集請求をすることができる。まず、乙社は平成29年5月の時点で甲社の総株主の議決権の4%を有しているところ、平成29年5月は平成30年1月より6か月前であるから、乙社は甲社の「総株主の議決権の百分の三」以上を「六箇月」以上前から「引き続き有する株主」である(297条1項)。また、剰余金の配当決議は株主総会においてすることとされており(453条、454条)「株主総会の目的事項」である。また、乙社は剰余金の増額配当決議をするという「招集の理由」を示す必要がある。

さらに、乙社は297条4項各号に当たる場合には「裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる」(同条4項柱書)。この場合、乙社は298条1項各号の事項について定めなければならない(298条1項柱書かっこ書き)。そして、乙社は299条1項により総会の「2週間…前まで:に通知を発しなければならない。また、甲社は公開会社だから327条1項1号により取締役会設置会社であるから、右通知は「書面でしなければならない」(299条2項2号)。そして、乙社は株主総会参考書類および議決権行使書面を交付しなければならない(301条1項、302条1項)。

2.株主提案権(303条)

上記のように甲社は「取締役会設置会社」である(327条1項1号)ところ、乙社は平成29年5月から甲社の総株主の議決権の4%を有しており「総株主の議決権の百分の一…以上の議決権」を「六箇月…以上前から引き続き有する株主」にあたる(303条2項)。また、剰余金の配当は株主総会の決議事項だから(453条、454条)、「一定の事項」(303条2項、同条1項かっこ書き)として「取締役に対し」「株主総会の目的」とすることを「請求」できる。また、平成30年1月時点においては、甲社の株主総会が開催される八週間以上前であるから「八週間…前まで」の要件をみたす(302条2項)。

また、甲社は「取締役会設置会社」であるところ、乙社は「総株主の議決権の百分の一以上」を「六箇月…以上前から引き続き有する株主」(305条1項但書)である。よって、乙社は「取締役に対し」乙社が提案しようとする議案の要領を「株主に通知すること…を請求することができる」(305条1項)。

3.以上より、株主総会請求の場合は株主側にイニシアチブがあり、濫用による混乱のおそれが大きいから要件が厳格であるのに対し、株主提案権の場合は会社にイニシアチブがあるから濫用による混乱のおそれがそれほど大きくなく要件が比較的緩やかである。

第2 設問2

1.本件新株予約権の無償割当ての差止め請求は適法か。

まず新株予約権の無償割当ての差止めの根拠は何か。新株予約権の無償割当ての差止めの根拠条文がないことから問題となる。

新株予約権の無償割当ての差止めを認める明文がないのは、通常新株予約権の無償割当てによっては株主の利益が害されることがないからである。とすれば、株主の利益が実質的に侵害されるおそれのある場合には、会社法247条を類推適用してよい。

よって、247条の類推適用によって新株予約権の無償割当ての差止め請求をなしうる。

2.247条1号該当性

(1)では、「法令」に「違反」したといえるか。

(2)乙社は以下の反論をする。株主平等原則とは会社が株式の数および内容に応じて株主を平等に取り扱わなければならないことをいうところ、株主新株予約権の無償割当ても株主としての地位に基づいてなされるものであるから、株主平等原則(109条1項)の適用がある。とすれば、本件新株予約権無償割当ての概要(以下、「本件概要」)8号、10号は乙社を不利益に取り扱うものであり、株主平等原則違反がある。

(3)しかし、株主平等原則の趣旨は、株式の数および内容に応じて株主を平等に取り扱うことにより、株主の利益を保護することにある。また、会社の存続・発展なくしてかかる株主の利益を保護することはできない。とすれば、企業価値が毀損され、株主共同の利益を害するような場合までかかる原則を貫くことは妥当でない。

よって、かかる不平等な取り扱いも、企業価値が毀損され、株主共同の利益が害される場合であって、これを防ぐために必要かつ相当な手段であるならば、株主平等原則に反しない。また、企業価値が毀損され、株主共同の利益が害されるか否かの判断は、会社の実質的所有者たる株主が行う。

(4)本件では、乙社は敵対的な買収により対象会社の支配権を取得し、経営陣を入れ替え、対象会社の財産を切り売りする投資手法をとっていること、乙社が甲社の事業に対して理解がないことなどから、乙社が甲社の支配権を取得すれば、甲社の財産を切り売りする可能性があり、また、経営陣を入れ替える可能性が高い。このような事情からすれば、甲社の企業価値が毀損され、株主共同の利益が害されるおそれがあるといえる。また、乙社の持株比率がこれ以上増加することを防ぐため、乙社が新株予約権の行使ができないとする本件概要8号は必要である。また、本件概要10号は、乙社がこれ以上の甲社の株式に買い増しを行わない旨を確約した場合には、甲社の取締役会は、本件新株予約権無償割当てにより株主に割り当てた新株予約権の全部を無償で取得できることとしており、乙社の不利益を緩和する措置が採られているから手段として相当である。

また、本件総会において乙社以外のほとんどの株主が賛成をしている。さらに、株主の判断の公正を害するような特段の事情もない。

(5)以上から、本件新株予約権無償割当ては株主平等原則に反せず、「法令」に「違反」しないため、247条1号に該当しない。

3.247条2号該当性

(1)では、「著しく不公正」といえるか。

(2)乙社は、本件新株予約権無償割当ては甲社の取締役が支配権維持目的で行ったものであるから、「著しく不公正」であると反論する。

しかし、新株予約権の無償割当ては募集株式の発行とは異なり、多様な目的でなされる。

とすれば、目的達成のため必要であり、かつ、手段として相当であれば「著しく不公正」とはいえないものと解する。

(3)本件では、本件新株予約権の無償割当ての目的は、乙社の持株比率が増加することによって甲社の企業価値が毀損されることを防ぎ、株主の共同利益を保護することにあるところ、本件概要8号・10号によって乙の持株比率を下げるために新株予約権の無償割当てをすることは目的達成のため必要である。また、上記のように本件概要10号は、乙社がこれ以上の甲社の株式に買い増しを行わない旨を確約した場合には、甲社の取締役会は、本件新株予約権無償割当てにより株主に割り当てた新株予約権の全部を無償で取得できることとしており、乙社の不利益を緩和する措置が採られているから手段として相当である。

(4)よって、本件新株予約権無償割当ては「著しく不公正」とはいえない。

第3 設問3

1.本件決議1は、出席した株主の過半数によっても財産処分をすることができる旨の定款変更をしているところ、かかる内容の定款は有効か。「決議の内容」が「法令」に違反するとして無効なのではないか問題となる(830条2項)

295条2項は定款において定めうる事項につき何ら限定していない。とすれば、定款内容の変更については、会社の本質や強行法規に反する場合を除き、適法であると解する。

本件では、議題1において株主総会の決議によって会社の財産を処分できることとしている。ここで会社財産の処分については、重要な財産の処分については362条4項1号により、それ以外の財産については同条2項1号によって取締役会の権限とされているところ、議題1の定款変更は財産の種類について何ら区別せずに株主総会の権限としており、かかる定款変更は会社の本質に反する。よって、本件決議1は「法令の内容」に違反があり、無効である。

2.では、Aは423条1項の責任を負うか。

(1)Aは甲社の代表取締役社長であり「役員等」にあたる。

(2)ア.では「任務を怠った」といえるか。この点、取締役は善管注意義務違反(330条、民法644条)を負うところ、上記のように本件決議1は無効であるからこれに基づいてされた本件決議2も無効であり従う必要がないから、P倉庫を売却したことは経営判断にあたる。

イ.取締役の経営判断の萎縮を避けるため、経営判断の誤りが善管注意義務違反となるのは①判断の基礎となる事実の認識に不注意な誤りがなかったか②認識した事実を前提として、通常の企業人を基準として判断が著しく不合理か、により決する。

ウ.本件では、Aは事実を正しく認識しており、不注意な誤りはない(①)。もっとも、P倉庫を売れば甲社に50億円を下らない損害が発生することが見込まれているところ、これを売るのは著しく不合理な判断である(②)。

エ.よってAには善管注意義務違反があり、「任務を怠った」といえる。

(3)また、甲社に多大な損害が発生しており「損害」があり、右損害はAの上記善管注意義務違反により発生しているから任務懈怠と損害の間に因果関係がある。また、少なくともAには過失がある。

3.以上より、Aは423条1項の責任を負う。

以上

 

【雑感】

・設問1 まとめのところはもう少しうまい表現あっただろうに。

・設問2 結論書くの忘れた、これはイカン。

・設問3 判例は知ってたけど、深読みしすぎたかな。

 並列なので「定款有効」→じゃあ、総会の内容に対する忠実義務(355条)があるから違反はないね→いやいや、355条の趣旨は会社利益の保護→今回の場合は総会決議に従わないことが会社の利益になる=任務懈怠「任務を怠った」の要件充足、という筋のほうが明らかに良かったな。後悔です。

今問題文の役員らの会話文を読んだら明らかにこっちのほうがいいですね、やっちまった。

(これを評価予想の際に考慮しないでほしいのですが)一応、再現答案の真意を説明しますと、「取締役会設置会社…迅速性が要求→重要なもの以外まで総会で決議しちゃいかんじゃろ」ということらしいです。ええ、「5月16日の現場での僕」がそう言ってたみたいです。

 

【使用教材】

『新・論文の森』

→解説と参考答案の質が高いため使用。改正法には注意が必要。

『スタンダード100』

→わがメインテキスト。

 

 

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