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【労働法 第2問 再現答案】
- 設問1
1.X組合は労働委員会に対し、支配介入(労働組合法7条3号、以下労組法)を理由とするポストノーティス命令を求めて不当労働行為救済申立(労組法27条1項)をする。また、X組合は裁判所に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をする。
2.(1)ア.Y社が本件労働協約(以下、「協約」)29条に基づいて、X組合が作成し貼り付けたビラ(以下、「本件ビラ」)を撤去した行為は「支配…介入」(労組法7条3号)にあたるか。
「支配…介入」とは、労働組合の自主性・団結力・組織力を損なうおそれのある行為をいう。
とすれば、「支配…介入」にあたるといえるためには、前提としてX組合が本件ビラを掲示板に貼り付けたことに組合活動の正当性が認められる必要がある。
(2).組合活動の正当性は認められるか。
まず、X組合が本件ビラを掲示板に貼り付けたことは本件労働協約27条に基づくものである。そして、協約28条、29条はビラの内容に制限を設けているところ、かかる規定は企業秩序維持のために必要であり、使用者の管理権の濫用とは言えない。よって協約28条、29条は有効である。
もっとも労働協約により組合活動を認められている場合であっても、無制限に許されるわけではない。労働組合は組合員の経済的地位の向上を目的としており(労組法2条柱書)、その活動に一定の公的役割を期待されている。とすれば、労働組合は自己の行為の結果が他の国民の自由権・財産権などの基本的権利を害することのないよう配慮すべき義務がある。
よって、組合活動の正当性があるかは、組合活動が社会的通念上相当といえるか否かにより決する。
本件では、本件ビラには「不当な賞与査定である」「上司によるセクハラ行為である」との内容が書かれている。しかし、Aの賞与がゼロとなったことには、Aが度々5分ないし10分の遅刻をしていること、業務上のミスが多いこと、という正当な理由がある。また、Aの賞与がゼロなのは、Aが上司の誘いを断ったことが真の原因ではないかという議論は苦情処理委員会でも検討されているところ、X組合側委員はセクハラがあった、会社側委員はセクハラは事実無根でありなかったというように協議は平行線のまま終了しており、その真偽は不明である。にもかかわらず、上記のようなショッキングな内容のビラを作成し、掲示板に貼り付けたことは社会通念上相当とされる限度を超えている。
また、本件ビラには「Y社の対応はセクハラを隠蔽しようとするものでコンプライアンス上重大な問題がある」とも記載されているが、上記の理由により社会通念上相当とはいえない。
本件ビラには「Y社は正当な理由なく団体交渉を拒否している」という記載がある。これに対し、Y社はそもそも個人の査定等の問題は集団的労使交渉にはなじまないから、苦情処理委員会を設けたのであって、また、苦情処理委員会において物別れに終わっている以上、これ以上説明することはないということを理由に団体交渉を拒否しているが、本件ビラのこの部分は理由がある。なぜなら、「正当な理由なく」(労組法7条2号)といえるためには義務的団交事項にあたればよいところ、労使対等による労働条件の決定という労組法の趣旨(労組法1条1項)に鑑みれば、義務的団交事項とは①労働条件その他労働者の待遇または労使関係の運営に関する事項であって②使用者が処分権限を有しているものをいう。本件ではAの賞与は①労働条件に関するものであり②Y社が処分権限を有しているから義務的団交事項に当たる。よって本件ビラの右記載には理由がある。
しかし、本件ビラを全体としてみれば、社会相当性が認められないことに変わりはないから、このことは結論を左右しない。
よって、X組合の本件ビラ貼りは、組合活動の正当性が認められず、本件ビラは「会社の信用を傷つけ、…個人をひぼうし、事実に反し、職場規律を乱すもの」として協約28条違反があるから、Y社が同29条に基づいて本件ビラを撤去したことは正当である。
以上より、ポストノーティス命令は認められない。
- 設問2
1.X組合は労働委員会に、Y社に対するチェックオフ命令を求める。
2.まず、チェックオフは、「賃金の一部」を「控除」するものであるから労働基準法(以下、労基法)24条1項但書の要件を満たす必要がある。
本件では、Y社がチェックオフについて定められた本件労働協約につき、90日前の解約予告をして解約されているから、労組法15条3項および4項により本件労働協約は解約されている。また、新たな労働協約も締結されていない。
よって、同項但書の要件をみたさず、チェックオフ命令を出すことはできない。
3.もっとも、このような場合でも労働委員会はチェックオフ命令を出せないか。
救済命令制度の趣旨は、正常な集団的労使関係秩序回復のため、労働委員会に広い裁量を与えたものである。とすれば、救済命令が正常な集団的労使関係秩序回復のために必要かつ相当と言えない場合には、救済命令は裁量の逸脱・濫用として違法となる。
本件では、上記のようにX組合とY社の間に労働協約がなく、労基法24条1項但書の要件をみたしていないところ、チェックオフ命令が出されればX組合・Y社間に労働協約が締結され、X組合の組合員とY社の間にチェックオフについての委任があったのと同様の状態を作出してしまう。これは、右のような協約締結・委任がないにもかかわらず、あるかのようにしてしまう点で、現実からかけ離れたものである。
また、上記の事態は、労働者に賃金の全額を受領させて労働者の経済生活の安定を脅かさないようにするという労基法24条1項の趣旨にも反する。
よって、チェックオフ命令は正常な集団的労使関係秩序回復のため必要かつ相当といえず、労働委員会はチェックオフ命令を出すことはできない。
以上
【雑感】
・第2問は何書けばいいか本当に分からなかった。本当に困った。
・設問1→おいおいおい、協約に根拠あるよ。典型論証パターンが使えない…汗
あと、団交拒否のねじこみがムリヤリすぎる!
・設問2→X組合往生際悪すぎだろ…あんたら何の救済を求めようっていうんだ…何にもわからないホントに。