予備試験を独学・1年で受験してみた

非法学部生が独学・1年未満で予備試験に合格した記録(問題集絶対主義)/73期弁護士

令和元年司法試験 再現答案 民法(B評価)

評価予想や議論のネタにしてもらうのは構いません。

一切の転載・複写をご遠慮願います。 

民法 再現答案】

第1設問1

1.(1)本件事故は、6月7日に起こっており、請負契約の目的物である甲建物の完成後引渡し前に起こっている。本件契約では、所有権の帰属に関する特約がないから、請負契約の目的物の完成後引渡し前の所有権は誰に帰属するか問題となる。

(2)当事者の合理的意思解釈から①目的物の材料の全部または重要な一部を提供した者に帰属し、②①の場合であっても注文者が代金を支払い済みであれば、注文者に所有権が帰属する旨の特約があったものと推認される。

(3)本件では、①請負人Bが甲建物の建築に必要な材料を全て自ら調達しているから、請負人Bに完成後引渡し前の甲建物の所有権が帰属するとも思える。

しかし、②について、Aはすでに請負報酬の80%を支払っている。この点、不可分債務においては債務の大部分を履行したといえれば、信義則上相手方は自己の債務の履行を拒むことはできない。本件でもAはすでに請負報酬の80%を支払い済みであるところ、これは債務の大部分を履行したといえる。よって、請負人Bは所有権の移転を拒むことはできず、本件では注文者Aに所有権が帰属する旨の特約があったものと推認される。また、推認を覆すような事情もない。

(4)以上より、本件事故が発生した当時において甲建物の所有者はAである。

2.(1)では、所有者Aに対して工作物責任民法717条1項、以下法名略)を問えるか。

(2)「土地の工作物」とは、土地に定着する建物およびこれと有機的一体となって機能する有体物をいうところ、甲建物はこれにあたる。

(3)「設置又は保存に瑕疵がある」とは、土地の工作物が通常有すべき安全性を有していないことをいう。本件では、甲建物に用いられていた建築資材に建物の一部損傷を招くような欠陥があり、通常有すべき安全性を有しておらず「瑕疵」がある。

(4)また、本件事故によってCが負傷しており、治療費の支出を余儀なくされているから「損害」がある。

(5)また、本件事故は甲建物に用いられていた建築資材の欠陥が原因で甲建物の一部が損傷し落下したことにより発生しているから、瑕疵と損害の因果関係もある。

(6)では、「占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした」(717条1項但書)といえるか。

たしかに、請負人Bは専門家として、甲建物に用いられていた建築資材の安全性について調査すべきであり、過失があったとも思える。しかし、右資材は定評があり、多くの新築建物に用いられていたこと、右資材の製造業者において検査漏れがあり、そのため必要な強度を有しない欠陥品が出荷され、甲建物にはたまたまそのようなものが用いられていたのであるが、請負人はそのような事情を知る由もないこと、などの事情に鑑みれば、Bには過失はなく「占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした」といえる。

(7)よって、本件では、CはAに対し、所有者としての無過失責任として工作物責任を追及できる。

第2設問2

1.Hの主張

(1)乙建物の所有権を取得し、登記を備えることによって、譲受人は賃貸人の地位をも譲り受けるとの主張をする。

(2)賃貸借契約の賃貸人の地位の譲渡は、債権譲渡と債務引き受けの両面を有するから、譲渡人・譲受人・賃借人の三者間の合意によるのが原則である。もっとも、当事者の合理的意思解釈および法律関係の錯そう化回避のため、賃貸人の地位は賃貸借契約の目的物の所有権の移転に伴い、当然に移転するものと解する。また、賃貸人の債務は没個性的であり所有者であれば誰でもできるものである。よって、Hは本件賃貸借契約の目的物である乙建物の所有権移転に伴って、賃貸人の地位を取得する。

(3)もっとも、賃貸人に賃料を請求するためには、賃借人の二重弁済回避のため、支払いのあて先を明確化するために、賃貸人は目的物の所有権登記を要する。よって、Hは乙建物の所有権登記を備えることにより、これ以後の本件賃貸借契約にかかる賃料債権を得ることができる。

2.Fの主張

(1)本件譲渡契約は将来債権の譲渡として有効であり、賃借人Eに対して右譲渡について確定日付ある通知をしていることで第三者対抗要件(467条1項2項)を備えているから、本件賃貸借契約にかかる平成28年9月から平成40年8月までの賃料債権はFに確定的に帰属すると主張する。

(2)まず、将来債権の譲渡は有効か。

ア.将来債権の譲渡は、たしかに発生可能性が低い場合もあるものの、当事者の合理的意思としては将来債権が発生しなかった場合は、契約責任を追及することにより清算することとしており、発生可能性が低いことをもって無効とすべきではない。

イ.もっとも、将来債権の譲渡が有効となるには、期間・発生原因・第三債務者等によりその内容が特定されている必要がある。本件譲渡契約では、平成28年9月から平成40年8月までと期間の限定があり、発生原因はDE間の本件賃貸借契約、第三債務者は本件賃貸借契約の賃借人Eと第三債務者の特定がされている。よって、本件譲渡契約はその内容が特定されている。

ウ.もっとも、将来債権の譲渡が、譲渡人に著しい不利益を及ぼす場合や、他の債権者に不当な不利益を及ぼす場合は公序良俗(90条)違反として無効となる。本件では、本件譲渡契約は上記のように限定されており、かかる事情はない。

エ.よって、本件譲渡契約は将来債権の譲渡として有効である。

(3)また、Fは平成28年8月3日に本件譲渡契約の譲渡につき内容証明郵便で、第三債務者Eに通知をしており第三者対抗要件を備えている(467条1項2項)ところ、Hの登記は右通知に遅れるものであるから、本件賃貸借契約にかかる賃料債権のうち平成28年9月から平成40年8月までの分はFが確定的に取得する。

3.私見

(1)上記のように、本件賃貸借契約にかかる賃料債権はDH間、DF間で二重譲渡されている。

では、債権が二重譲渡された場合、その優劣はどのように決するか。

(2)この点、民法467条1項は「債務者その他の第三者に対抗することができない」としているところ、同条は債務者の認識を通じて公示を図るものとしている。とすれば、債権の二重譲渡がされた場合は、債務者への通知の到達の先後によって決する。

(3)ア.本件では、DF間の譲渡は、平成28年8月4日に確定日付ある通知によりEに到達している。

イ.DH間の譲渡についての平成30年2月21日の通知に確定日付がない場合は、第三者対抗要件がなく、Fが優先する。

ウ.DH間の譲渡についての平成30年2月21日の通知に確定日付がある場合は、第三者対抗要件を備えているところ、DF間の譲渡通知は平成28年8月4日に債務者Eに到達しているから、DF間の譲渡についての通知が先にEに到達しており、やはりFが優先する。

(4)以上から、Fが平成28年9月から平成40年8月までの本件賃貸借契約にかかる賃料債権を確定的に取得するから、Fが優先し、下線部㋑が正当である。

第3設問3

1.Hは、本件債務引き受け契約は錯誤(95条)により無効であると主張する。

2.(1)本件では、Hが本件賃貸借契約に係る賃料を受け取れることを動機として締結されたものであるところ、動機に錯誤がある。では、動機の錯誤も錯誤にあたるか。

(2)「錯誤」は内心と表示の不一致をいうところ、本件ではかかる不一致はなく錯誤にあたらないのが原則である。もっとも、錯誤は動機の錯誤がほとんどであるから、動機の錯誤を否定すると表意者保護にもとる。そこで、表意者保護と取引安全の調和の見地から、動機が明示または黙示に相手方に表示され、契約の内容となっている場合には動機の錯誤も「錯誤」にあたるものと解する。

(3)ここで、Gからは本件債務引き受け契約は第三者のためにする契約(537条)としてなされたものであり、乙建物の賃料債権というDH間の対価関係は契約の内容となっていないと反論する。

(4)しかし、事実10.の合意(以下、「本件合意」)の④は、Gが「乙建物を売りに出せば、買主は長期の安定した賃料収入を見込めることもあり相当な価格で売れるのではないか」と述べていることが発端となってなされたものだから、乙建物の賃料債権が本件合意④の内容となっていることはあきらかであり、動機が契約の内容となっているといえる。よって、「錯誤」がある。

(5)また、乙建物の賃料債権が得られなければ、Hはもちろん、一般人も本件債務引き受け契約を締結しなかったであろうから「要素」の錯誤がある。

3.よって、Hは本件債務引き受け契約の錯誤無効を主張できる。     以上

 

【雑感】

・大事故科目No.3 コイツがボス→なんか噂では簡単らしかった(僕的には去年のほうがずっと簡単でしたが)ので、Fも覚悟

・設問1 これが一番マシ?弁済の判例をなぜかここで持ってくる。

・設問2 大学時代の同級生らから聞いた話によれば、「将来債権譲渡の移転時期」という論点らしいです。…知りません!聞いたこともありません!

試験中、移転時期は気にはなりましたが、「本契約型の話だっけ?いや、あれは債権譲渡担保やったな」と切り捨てました。まあ書いたとしても事故になってたでしょうから、仕方ありません諦めます。

・設問3 設問2が死亡のため、現場でも何書いていいかわからなかったがとりあえず「動機の錯誤」を書く。ただ、第三者のためにする契約と対価関係の話なんか絶対いらなかっただろ、余事記載でしかも理解不足と思われかねない。仮に「動機の錯誤」で当たってたとしても、時間不足のため条文を引くことをせず、重過失の検討を見事に忘れる。

 

【使用教材】

『逐条テキスト』

→疑問点があれば辞書として活用。

『新・論文の森』

→解説と参考答案の質が高いため、上下巻ともに使用。スタンダード100でしっくりこなかった典型論点を解決してくれた。

『スタンダード100』

→わがメインテキスト。

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