予備試験を独学・1年で受験してみた

非法学部生が独学・1年未満で予備試験に合格した記録(問題集絶対主義)/73期弁護士

令和元年司法試験 再現答案 行政法(B評価)

評価予想や議論のネタにしてもらうのは構いません。

一切の転載・複写をご遠慮願います。

 【行政法 再現答案】

 

第1 設問1

Aは本件取消訴訟において本件事業認定の違法を主張できるか。

処分には、公定力があるから、先行処分の違法は後行処分の取消訴訟において主張できないのが原則である。もっとも、かかる原則をあまりに貫くと国民の権利救済の観点から妥当ではない。

そこで、先行処分と後行処分が一連の手続をなしているかという実体的側面と、先行処分の違法を争う手続的保障が十分なされていたかという手続的側面の観点から、両処分が一連一体の処分といえる場合には、違法性の承継を認め、後行処分の取消訴訟において先行処分の違法を主張できるものと解する。

B県は、土地収用法(以下、「法」)39条は収用または使用の裁決を受けるためには、法26条による事業認定とは別個に改めて申請をする必要があるから、先行処分と後行処分が一連の手続をなしているとはいえず、実体的な一体性は認められないと反論する。

しかし、法47条、47条の2は法20条によって事業認定がされた場合には、それと異なる時を除き(法47条1号)、認容裁決をしなければならないとしており、改めて内容を審査することを予定していない。とすれば、本件事業認定と本件権利取得裁決は、一連の手続をなし、実体的に一体であると認められる。

B県は以下の反論をする。法26条、法28条の2において事業認定があった旨を告示するとの規定を置いているから、先行処分の違法を争う十分な手続的保障があった。また、本件では、任意買収を行うことについての交渉を行っていたのであるから、Aは本件事業認定の存在を知りえたといえる。よって、本件事業認定と本件権利取得裁決は手続的に一体ではない。

しかし、法26条、28条の2による告示等は公示力が弱く、通常、これによって法20条の事業認定の存在を知りえない。また、たしかに本件では本件土地について任意買収の交渉が行われていたものの、専門家でもないAはこれをもって事業認定が存在することを認識することは不可能である。よって、本件事業認定と本件権利取得裁決は、手続的に一体である。

以上より、本件事業認定と本件権利取得裁決は実体的にも手続的にも一体であるから、両処分は一連一体の処分である。よって、Aは本件取消訴訟において本件事業認定の違法を主張することができる。

第2 設問2 小問1

 1.B県は以下のような反論をする。

 行政事件訴訟法(以下、行訴法)36条の「当該処分若しくは裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」とは、無効確認訴訟に不可争力がないことから補充性の要件を定めたものであり、字義通りに解すべきである。本件では、Aは本件土地の明渡義務不存在確認請求を求めることによって、本件土地の明渡し義務のないことを既判力をもって確定でき、これによって目的を達成できる。よって、本件権利取得裁決の無効確認訴訟は「当該処分若しくは裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」とはいえず、適法とならない。

2.しかし、国民の権利救済の観点から、「当該処分若しくは裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」とは、現在の紛争解決にとって直接的で適切であることをいう。そして、民事訴訟によってかかる補充性の要件が否定されてしまうと、無効確認訴訟の存在意義がなくなってしまうから、民事訴訟が提起できることをもっては補充性要件は否定されない。

3.本件では、本件権利取得裁決の無効確認訴訟によって、本件権利取得裁決の無効を確定でき、これにもとづく本件土地の明渡義務を否定できるから、現在の紛争解決にとって直接的で適切であるといえる。

4.よって、本件権利取得裁決の無効確認訴訟はかかる補充性の要件をみたし、適法である。 

 第3 設問2 小問2

1.行政調査と処分の違法

(1)B県は以下の反論をする。すなわち、行政調査と事業認定は別個の処分であるから、行政調査に違法があっても事業認定の違法を構成しない。

(2)しかし、適正手続の見地から、行政調査が処分の要件になっていない場合であっても、行政調査に重大な違法があれば処分の違法を構成するものと解する。本件では、平成22年調査にはC市の調査手法に誤りがあり、重大な違法がある。よって、行政調査に重大な違法があり、これにもとづいてなされた本件事業認定は違法である。

2.裁量の逸脱・濫用

(1)まず、B県知事には、法20条1号は「適正且つ合理的な利用」という抽象的な文言を用いていること、事業認定は専門技術的判断を要することから要件裁量があり、また、同条柱書の「できる」の文言から効果裁量が認められる。

(2)ア.交通量が3分の1にまで減るならば、土地収用によって得られる利益とされる「道路ネットワークの形成」には必要性がなく、B県知事の本件事業認定は不合理であるから裁量の逸脱濫用として違法である。

B県は以下の反論をする。すなわち、本件道路の整備によっては、「道路ネットワークの形成」のみならず「通行者の安全性の確保」「地域の防災性の向上」という3つの利益があるところ、これらを総合的に判断すれば、本件土地の収用によって失われる利益はそれほど大きくなく、また、事業計画は適正かつ合理的であるとしたB県知事の判断は裁量の範囲内にあり、適法である。

イ.仮に「道路ネットワークの形成」のために本件道路が必要だとしても、その必要性はかえって通過車両が増加するなどして、良好な住環境が破壊されるだけであるから、本件事業認定は考慮不尽であり裁量の逸脱濫用として違法である。

B県は以下の反論をする。上記のように総合的に判断すれば、本件事業認定は裁量の範囲内であり、適法である。

ウ.B県は以下の反論をする。すなわち、法には本件土地の自然環境の保護について考慮すべきとする明文がないから、本件土地の自然環境に影響を与えないようなルートをとることができるかについて検討しなかったことは、裁量の逸脱濫用ではなく、違法ではない。

しかし、土地収用の際は、できる限り私人の財産に影響を与えないような配慮をすべきであり、B県は本件土地の自然環境に影響を与えないようなルートをとることができるかを検討する必要がある(林試の森事件)。本件では右事項についてB県は何ら検討しておらず、考慮不尽であるから、裁量の逸脱濫用となり違法である。

エ.Aは、以前本件土地周辺の工事では、深さ2メートル程度の掘削工事で井戸が枯れたことがあること、また、B県は防災目的の井戸への影響を何ら調査していないから、B県による本件事業認定は考慮不尽として裁量の逸脱濫用にあたると主張する。

B県は以下の反論をする。すなわち、B県は調査によって、本件土地での掘削の深さは2メートル程度であり、地下水には影響がないと判断しており、かかる判断は合理的であることから裁量の逸脱濫用はない。                                       以上

 

【雑感】

・誘導にやたら「裁決固有の瑕疵」というワードが並んでいたため、無駄に原処分主義対裁決主義の話と迷う。

・誰だ、5年連続で原告適格が出るだの、今年は処分性が出るだの言ってたのは。

・正直、設問2小問2の2.の裁量の話で何を書いたかあまり覚えていません。

・設問2小問2の答え方間違えてねえか汗(睡眠不足の祟り…ホテルの枕柔らかすぎ問題、という言い訳)

・『湯神くんには友達がいない』の最新刊買うのすっかり忘れてた。

 

【使用教材】

判例百選』

→公法系は判例を知らないと/理解していないと他の人に差を付けられるため。


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