予備試験を独学・1年で受験してみた

非法学部生が独学・1年未満で予備試験に合格した記録(問題集絶対主義)/73期弁護士

令和元年司法試験 再現答案 民事訴訟法(A評価)

評価予想や議論のネタにしてもらうのは構いません。

一切の転載・複写をご遠慮願います。

民事訴訟法 再現答案】

第1 設問1

1.課題⑴

Yは、民事訴訟法(以下法名略)11条により、わざわざ管轄を定める内容の契約をしているのだから、他の裁判所は管轄から排除されるのであり、管轄はB地方裁判所に限定されると反論する。すなわち、管轄を定める旨の契約は、処分権主義の範囲内であるところ、当事者がこれにつき合意した場合、相手方当事者に著しい不利益がない限り、かかる契約は拘束力を有する。よって、本件訴訟の管轄は、B地方裁判所に限定される。

しかし、11条の管轄合意は4条、5条で定められたものに管轄を追加するものにすぎない。また、11条の管轄合意の拘束力はそれほど強いものでもない(16条2項かっこ書き、20条かっこ書き参照)。すると、本件定めの内容はB地方裁判所に管轄を限定する趣旨ではなく、4条の管轄のほかB地方裁判所においても管轄を認める旨の合意にすぎない。よって、本件定めはA地方裁判所を本件契約に関する紛争の管轄裁判所から排除することを内容とするものではない。

2.課題⑵

本件定めが「B地方裁判所のみを第一審の管轄裁判所とする」という内容であったとしても、本件訴訟は17条によってA地方裁判所に移送されるべきである。

本件では、Xの居住地、訴訟代理人Lの事務所はA市の中心部にあるところ、ここからB地方裁判所までは600㎞の距離があり、移動の負担が大きい。また、たしかにY社の本店はB市中心部にあるものの、Y社は全国各地に支店を展開しておりA市にも支店がある。さらに、本件契約はA支店でなされているから、A支店に契約書等の証拠があり、また、A支店の従業員を証人尋問することも想定されるところ、これらのものの移動にも負担がかかる。とすれば、「当事者…の住所…その他の事情を考慮して」「訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要がある」から、「申立て又は職権により」本件訴訟はA地方裁判所に移送されるべきである(17条)。

第2 設問2

1.(1)Yが事実④を認める旨の主張は、裁判上の自白にあたり不可撤回効によって自由に撤回できないのではないか。

(2)裁判上の自白とは、期日においてする相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める旨の陳述をいう。なお、基準の明確性から、「自己に不利益」とは相手方が証明責任を負うものをいう。

(3)そして、当事者が争わない事実は判決の基礎としなければならないという弁論主義の第2テーゼから、裁判上の自白に当たる場合には裁判所拘束力が生じる。このように裁判所拘束力は弁論主義を根拠としているから、裁判所拘束力の生じる範囲と弁論主義の適用範囲は一致する。そして、証拠と同様の機能を営む間接事実や補助事実にまで弁論主義の適用を認めると、裁判所の自由心証主義(247条)を害するから、弁論主義の適用範囲は主要事実に限られる。

(4)また、当事者拘束力すなわち不可撤回効は、裁判所拘束力により裁判所が異なる事実を認定することはないと相手方当事者が信頼することから、相手方の既得地位保護のため禁反言の原則により信義則上(2条)生じるものである。すると、不可撤回効の生じる範囲は裁判所拘束力の範囲と一致し、主要事実に限定される。

2.(1)では、事実④は主要事実に当たり、不可撤回効によって自由に撤回できないのではないか。

(2)元の請求は履行遅滞による本件契約の解除にもとづく原状回復請求であるところ、元の請求原因事実は、①本件契約の締結②「債務の本旨」に従った履行がないこと(民法415条)③催告④催告後相当期間の経過⑤解除の意思表示である。

すると、「本件事故が起きたこと」という事実④は主要事実に当たらない。よって、事実④は元の請求との関係では裁判上の自白にあたらない。

(3)他方、追加された請求は本件損壊事実についての債務不履行にもとづく損害賠償請求である。右請求の請求原因事実は、①本件契約の締結②「債務の本旨」に従った履行がないこと(民法415条)③損害④因果関係⑤故意・過失である。

本件では、ベッドが本件仕様を有していないことで、本件事故が起きたことにより腕時計が損壊しているところ、事実④は債務不履行と損害の因果関係を示す具体的事実である。とすれば、事実④は追加された請求との関係では、主要事実であり裁判上の自白にあたる。

(4)すると、元の請求についての訴訟資料は、特に援用がなくても追加された請求についての訴訟資料になるとの理解を前提にすると、事実④は追加された請求との関係では裁判上の自白にあたり、不可撤回効により自由に撤回できないとも思える。しかし、不可撤回効の根拠は、上記のように相手方の既得地位を害しないようにすることにあるところ、事実④は元の請求との関係では主要事実にあたらず裁判上の自白にあたらないから、相手方に既得地位に対する期待は生じない。よって、上記不可撤回効の根拠が妥当せず、撤回を認めても信義則に反しないから、Yは事実④を認める陳述を撤回できる。

第3 設問3

1.Zは本件日記の文書提出義務(220条)を負うか。

2.まず、同条4号は文書の一般的な提出義務を定めたものであるから、はじめに1号ないし3号を検討する必要がある。本件では1号ないし3号に該当する事由はない。

3.では、本件日記は220条4号ニの除外事由として文書提出義務を負わないのではないか。

「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」とは、①内部利用目的で作成され、外部への開示が予定されておらず②開示によって文書の所持者に著しい不利益が及ぶものをいう。

本件では、①本件日記がどのような目的で作成されたのか、外部開示目的があったか②本件日記を開示することによって、TやZのプライバシーに著しい不利益があるか、といった観点を考慮して文書提出義務の有無を判断すべきである。         以上

  

【雑感】

・大事故科目No.2

 ・設問2以外全く分からなかった。

・試験現場での脳内

「設問1管轄!?普通裁判籍以外、丸々1年も見てないわ。とっくに忘れた。」

「設問1は、去年の試験の設問1で管轄大展開したヤツのせいだな、クソ~(#^ω^)」

「設問3なんじゃこりゃ。まあ、スタンダード100に載ってた旧試験の参考答案そのまま貼りつけとこ」

 

【使用教材】

『逐条テキスト』

→疑問点があれば辞書として活用。

『新・論文の森』

→解説と参考答案の質が高いため使用。体系的理解につながるため、新論文の森の中でも刑法&刑訴法と並んでの良書だと思う。

『スタンダード100』

→わがメインテキスト。

 

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