弁護士登録をして約1年4ヶ月になりました。
73期弁護士の司法の犬でございます。
今回は、弁護士を目指す方向けに、弁護士の仕事について書きます。
予備試験/司法試験の勉強の息抜き程度に読んでもらえればと思います。
(面白かったら「もっとこういう類の記事を出してくれ」というリクエストを、ぜひコメントしてください)
前置き
さて、弁護士の仕事につき、弁護士になってから(少なくとも弁護士になる前より強く)感じるようになったことを書こうと思います。
弁護士の良い面(依然として平均年収は高め、社会的地位、独立可能な国家資格…)は広く知られているように思いますが、ネガティブな面については目が行かないことが多いように思いますので、ネガティブな面に重心を置きながらご紹介して行くつもりです。
(なので、結果として皆さんのモチベーションを削いでしまうかも笑)
今回は、「弁護士は主人公ではなく、あくまで補佐役」ということです。
当然の話ですね。
当事者は依頼者であって、
弁護士は、依頼者がやりたいことをサポートする役に過ぎません。
弁護士は依頼者に対して提案はするものの、意思決定をするのは依頼者であり、依頼者の手足となるのが基本です。
ですので、弁護士の仕事は、依頼者の意向によって諸々左右されますし、制限されます。
1 仕事の枠組み・制限
依頼者の意思を無視して、弁護士が自分の好き勝手することはできません(弁護士職務基本規程第22条1項)。
弁護士自身が良いと思ったことであっても、依頼者がOKを出さなければ依頼者の言う通りにするのが基本です。
分かりやすい例で言えば、判決になれば原告である依頼者がほぼ確実に負けることが想定される事件において、和解して少しでもお金を貰った方がよいと思える場合でも、依頼者が「和解しない」といえば和解してはいけません。
また、弁護士にクリエイティブさは求められないし、クリエイティブさを発揮してはいけないと思います。
条文に従い、裁判例に従い、人によっては、前例となる裁判例がないとき等に時折学説を引用するくらいのことです。
法曹界の「常識」に沿って仕事を進めるのが通常です。
「常識」から外れる弁護士は、おそらく他の法曹から仕事ができない人として扱われます。
また、例えば訴訟のやり方ですと、訴訟法・訴訟規則で進行の方法が決まっていますので、いくら現行のやり方が非効率でも従わざるを得ません。
例えば裁判期日には、「陳述します。」と言うのと次回期日の日程を決めるためだけに、遠方の裁判所に出頭しなければならない…というのは聞いたことがあるでしょう。
(ちなみに中国にはオンライン訴訟制度があり、裁判所への出頭をしなくてもよく、また、書面もオンラインでやり取り・保管するというオンライン訴訟制度があるそうです。日本より進んでますね笑)
こんな感じなので、弁護士として、イーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏、孫正義氏のように、型破り/破天荒な改革者として、夢を追求して楽しんでいくビジネス人生を送ることは100%無理でしょう。
2 期限等
アソシエイト弁護士(≒パシリ弁護士)の私に対して期限を設定してくるのは、パートナー弁護士(≒経営者層弁護士)です。
アソシエイトからの成果物の提出期限は、①依頼者から決められた期限を基に、②パートナー弁護士が我々アソシエイト弁護士の提出物をチェックする時間を踏まえて決められます。
①について
依頼者によっては、かなり厳しい期限を設定してくることがあります。
例えば、普通に作業すれば2ヶ月はかかるものを、「2週間以内に成果物をよこせ」と言ってくる依頼者がいました。
僕は企業法務の事務所所属ですが、特に年末年始は厳しい期限を設定する企業が激増し、大挙してきます。
2021年の年末も、「僕がボス弁なら絶対断るぞ」と思う案件もいくつかありましたが、苦労するのはボス弁ではなく、仕事を振られるアソシエイト弁護士ですので、ボス弁は、企業の無茶振りを安請け合いすることが可能です。
僕は、2021年12月中から2022年1月上旬までは毎日(土日休みなんてないです。年末年始休みも大幅に短縮です)深夜2時から3時まで仕事をしました…。
②について
案件によって、多少変わりますが、1日〜5日程度見られることが多いです。
物によっては、数時間で依頼者に送付したり、一週間後に依頼者に送付することもあります。
ですので、パートナー弁護士がアソシエイト弁護士に設定してくる提出期限は、依頼者が設定した期限よりも更に前倒しになります。
3 値引き交渉
意外に多いのが、上限の予算を設定してくるタイプの案件です。
例えば、1時間あたり5万円の報酬が標準の弁護士に、「この案件の上限予算は20万円でやって下さい」との依頼が来るとします。
仮にその弁護士が4時間を超えて作業したとしても、依頼者には20万円しか請求しないことになります。
すると、タダ働きの時間が発生することになりますね。
ただ、前もって予算を設定してくれる依頼者については、弁護士側でも前もって受諾するか否かの検討ができますから全く問題ありません。
問題なのは、全ての作業が終わり、成果物を納品した後に「請求額が想定より高いから、ちょっと安くしてよ」と言ってくる依頼者です。
これはよくトラブルの原因となるようです。
報酬体系については、前もって説明しているんですがね…
僕は、年末年始に期限の無茶振りをしてきた企業のうちの一つが、このような作業完了後の報酬減額を求めてきたので「く●○れ!」と思いました。
また、これを承諾したボスに対しても同様の感情を抱きました。
4 良い面も有ります
上記1の制限については、手の打ちようがありません。
また、アソシエイト弁護士でいる限り上記2及び3の制限についても、基本的にどうすることもできません。
しかし、独立してしまえば、上記1の制限は残りますが、上記2及び3については、「自分が気に入らなければ受任しない」と(パートナーでなく)自分で決めることが可能です。
つまり、独立するまでは制限だらけの職業ですが、独立してしまえば自由になれます。
そして幸運にも、弁護士は手に職が付くため、一般の会社員や公務員と比較すれば極めて独立しやすい職です。
(主に顧客を獲得できず費用と生活費が稼げないのではないか等の金銭面から)独立に不安を持つことはあると思いますが、既に独立をした諸先輩方の資料を拝見しても、独立のハードルは思ったよりも低そうです。
例えば、僕は以下の書籍を修習生の間から読んでいました。
『弁護士 独立・経営の不安解消Q&A』:5人の独立経験者弁護士が、独立を考える人に向けて、独立に際しての不安・疑問について、163のQ&Aで網羅的に答えています。
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『弁護士が独立を思い立ったら最初に読む本』:こちらも独立の諸問題について記述した本ですが、独立のタイミングや顧客獲得方法について、詳しい記述がなされているのが個人的に良いと思いました。
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以上
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・これから予備試験・司法試験を受験する方へ
オンライン予備校を利用して受験勉強をすることをお勧めします。
・僕がオンライン予備校が良いと思う理由については、以下の記事をご覧ください。
・僕が考える受講シミュレーションを作成したこともあります。
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・転職を考える方へ
もしも転職エージェントを利用する場合には、職業の特殊性を考え、弁護士専門のエージェントの利用も検討してはいかがでしょうか。
僕は、弁護士登録から1年経過時にインハウスへの転職活動をしました。
その時の体験談です。