予備試験を独学・1年で受験してみた

他のブログと違う視点で「合格まで」を考える/73期弁護士

二回試験に落ちるのが怖い人は、導入修習を1番頑張るべし(私見)&民事裁判起案の型

この記事は、「とにかく二回試験に合格したい」人向けです。

一定の成績を取る必要がある裁判官、検察官志望者についてはワンポイント+αアドバイスを書きます。

導入修習頑張れば多分大丈夫

二回試験に落ちないことを最大かつほぼ唯一の目標にしている人は導入修習を頑張りましょう。

導入修習で起案の基本を身につけてしまえば、残りの修習はものすごく楽になります。

 

起案での項目立て及びその順序

並びに

各項目で何を書くのか及びその際の注意点

(以下、「起案の型」といいます)は何よりも先におさえましょう! 

起案の型とは(民事裁判を例に)

例えば民事裁判起案*1の型は以下のとおりです。

注:白表紙「要件事実」及び「事例で考える民事事実認定」を基礎に、僕の理解及び思考プロセスを記したものであることに注意してお読みください。

⑴問題構成

・要件事実が、

訴訟物及びその個数(第1問)、主要事実(第2問⑴)、争いのある主要事実(第2問⑵)

・事実認定が、

証拠構造(第1〜第4類型、第3問⑴)事実認定(動かし難い事実の認定&その動かし難い事実の評価、第3問⑵)となっています。

 

⑵要件事実問題と事実認定問題で書くべきこと(太字は注意点)

ア 要件事実

・主要事実では、立証責任を負う当事者が立証すべき主要事実を過不足なく、かつ、十分に書く(特に余事記載には注意

・争いのある主要事実は、前記主要事実のうち、反対当事者が不知または否認した主要事実を、記号で引用する

要件事実は、このルールを守りつつ、白表示「要件事実」に加えて「紛争類型別」「完全講義 民事裁判実務の基礎」「要件事実30講」*2などで演習をするのが必須です。

 

「紛争類型別」

 
紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造

 

「完全講義 民事裁判実務の基礎」

 
完全講義 民事裁判実務の基礎〔第3版〕(上巻)

 

「要件事実30講」:僕はこれを使用


要件事実論30講 <第4版>
 

  

イ 事実認定

(ア)証拠構造の判断方法(事例で考える民事事実認定p48~)

証拠構造が第何類型に当たるか忘れずに書いてください。

(ステップ1)

直接証拠である類型的信用文書があるか(直接証拠、かつ、類型的信用文書)

→ある・・・①へ

→ない・・・②へ

 

(ステップ2)

 ・・・①直接証拠である類型的信用文書の成立の真正に争いがあるか

(どの文書のどの部分がどのように直接証拠に当たるのか記載する)

 →ない→判断の中心は、記載通りの認定をすべきでない特段の事情の有無(第1類型)

 →ある→判断の中心は、成立の真正/二段の推定が働くか、それが働く時は反証の成否(第2類型)

 ・・・②直接証拠である供述証拠があるか(当事者本人の供述を含む!

(どの供述のどの部分がどのように直接証拠に当たるのか記載する)

 →ある→判断の中心は、供述の信用性(第3類型、どの供述のどの部分が直接証拠に当たるのか記載すること)

 →ない→判断の中心は、間接事実の積み上げにより要証事実を推認できるか(第4類型)

 

(イ)事実認定

事実認定は、

 ・契約等の事前の事情

 ・契約等の際の事情

 ・契約等の事後の事情

 

を基本として、視点を設定する。

また、各視点ごとに

 ・契約等の事前の事情(動かし難い事実の認定&その評価)

 ・契約等の際の事情(動かし難い事実の認定&その評価)

 ・契約等の事後の事情(動かし難い事実の認定&その評価)

 

 とし、 

 最後に

 ・総合評価

 を行うのが基本の型。

注意:判断の中心に関する事実についてのみ動かし難い事実の認定&事実評価をするのではなく、(要証事実の成否に影響を与える)全ての事実について行うこと!

✖︎押印に関する事実だけ検討する(第2類型で)、供述の信用性だけ動かし難い事実の認定&その評価をする(第3類型で)

全ての*3動かし難い事実の認定&その評価をする*4

 

(イ)動かし難い事実の認定(事例で考える民事事実認定p58~)

以下に従って豊富に認定をする。後で行う評価に資する程度には具体的にすること*5

1)争いのない事実

(当事者双方の訴状・答弁書準備書面書面での主張において一致している事実、事実摘示のあとカッコ書で「争いなし」と記載)

 

2)当事者双方供述の一致

(陳述書、尋問等の供述で当事者双方が一致している事実、「X14,Y19」「甲10(陳述書)の6、Y52」等、「X●,Y●」の記載を基本として、原告のどの供述と被告のどの供述が一致するか記載)

 

3)成立の真正が認められ信用性の高い書証に記載のある事実(「甲●」「乙●」と記載)

 

4)不利益事実の承認(「訴状第2の1⑷ア、不利益」「X14、不利益」と記載)

 

5)弁論の全趣旨(例えば、特に主張・供述に表れていないけれど、消費貸借契約書が作られていない、など。「弁論の全趣旨」と記載)

認定した動かし難い事実の評価方法

認定した複数の動かし難い事実が、設定した視点の範囲において、1.要証事実を推認させるのか、推認させもしないし消極方向にも働かないのか、消極方向に働くのか 2.推認または消極の場合はどの程度か、それぞれ理由を示して論ずる。

総合評価

各視点ごとでの評価の相互関係を考慮して、要証事実の成否を判断する。

結論部分は、「(証拠類型第2の場合)よって、甲●の印影はYの意思によって押印されたとは認められず、反証が成立するので、要証事実は認められない。」

「(証拠類型第3の場合)よって、Xの供述は信用でき、要証事実は認められる。」

などと、証拠構造に合わせて書くこと。

 

起案の基本については、下記記事で書いたような、主要な白表紙及び授業の内容を習得すれば大丈夫です。

shihounoinu.hatenablog.com

 

導入修習を頑張った司法の犬のその後

導入修習で導入修習で起案の基本を身につけていれば、実務修習で平日9:00-17:00以外に自習をしなくても、実務修習の内容が自然に起案の理解に繋がります。

各科目で起案の型は異なりますので、1.各科目の型を暗記及び理解すること2.科目間で混同しないことが大事です

導入修習に上記のような起案の型、すなわち、項目立てとその順序及び各項目で何を書くのか、各項目での注意点の4つさえ押さえていれば、実務修習中の体験も起案に活きてくると思います。

また、集合修習でも理解が早く、深くなるはずです。

僕は、集合修習中には課題以外の自習はせず、二回試験直前は全く勉強せず中国ドラマを見たり趣味に興じていましたが、

・集合修習の起案は3段階評価の科目はA、5段階評価の科目は基本BでたまにA,C

二回試験は優と良のみ

でした。

(おまけ)良い成績を目指す人に

実務修習で担当だった左陪席裁判官(71期)

及び

裁判官になった修習同期(73期)が使用していた教材を列挙します。

どれも割と定番の本です。 

 

「ステップアップ事実認定」:民事裁判の事実認定


ステップアップ民事事実認定 第2版
 

 

「事実認定の考え方と実務」:民事裁判の事実認定


紛争類型別 事実認定の考え方と実務〔第2版〕
 

 

「刑事事実認定重要判決」:刑事裁判の事実認定

 
刑事事実認定重要判決50選〔第3版〕(上)

 

「起案添削教室」:弁護起案


弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室
  

 

裁判官になった同期同クラスの人は、

額面月13万5,000円の少ない資金から自腹切って、大量の本を買って勉強していました。尊敬!

 

その他のおすすめの本(成績優秀を目指す人に限らない)は、こちらの記事をご覧ください。

shihounoinu.hatenablog.com

 

 

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*1:二回試験で優だった科目、かつ、型が一番決まった科目なので例に挙げます

*2:73期の僕のクラスではこの順に使用者が多かった感覚です

*3:本当は「全ての」ではなく要証事実の判断に影響のある全ての事実というべきですが、最初のうちは「全ての」動かし難い事実くらいの感覚でOK

*4:事実認定の「総合評価」にて後述しますが、最終的には全ての事実を検討するとXの供述は信用できると言うことになります

*5:なお、ここで認定していない事実を評価の項目においていきなり出現させるのはNG。評価に用いる事実は動かし難い事実として認定しよう